gerhard rihiter/ゲルハルト リヒター体験



ゲルハルト リヒターの絵を初めて見たのは、マドリッドにある王立ソフィア美術館だった。
その美術館にはピカソのゲルニカがあって、僕はそれを見にいったのだ。
けれどそこで僕を心底惹き付けたのはピカソでもダリでもなく、1度も名前を聞いたことの無いリヒターだった。

美術館の1階では丁度、リヒターのレトロスペクティブ をやっていて、僕はなにげなく立ち寄ったのだった。
そして、その場所から動けなくなった。


その絵は一見して写真のように見えた。
しかし、よく見るとそれは写真では無く、油絵の具で描かれていた。
それは、よくあるような景色の風景画で、うすぼんやりとしたヨーロッパの田園風景がとてもリアルに描かれていた。
それは、よくあるような景色ではあるが、決してよくあるような風景画であったわけでは無い。
その絵は何かが普通の絵と違っていた。
それが何であるかは解らない。
そしてそれはなぜか僕を強烈に惹き付けた。
それは僕を遠くへ連れていくような そんな感じがした。
けれども、なぜだかそれはすぐそこにあるのだ。
ピカソもダリもそれ以上の感動を与えてはくれなかった。

何年かが過ぎ、僕はイタリアを旅していた。
ある2月のすごく寒い朝だった。
僕はナポリからローマへ向かう列車に乗っていた。
車内には学校へ通学する学生が乗り込んできては去っていった。
その日イタリアには寒波がやってきていて、凍えるような寒さだったのだが、列車の中は暖房が効いていて比較的暖かかった。
僕はぼんやりと窓の外を眺めていた。
列車の窓は内と外の温度差のために曇っていて、曇ったガラス越しに外を見ていた僕は、突然強烈なデジャヴにおそわれた。

この景色を僕はどこかで見たことがある。

どこで...

それはあの美術館だった。あの時美術館で見たリヒターの絵が、今、目の前に拡がっているのだ。
まぎれもなく、それはそこにあった。

リヒターがこの場所そのものを描いたという訳ではないのだろう。
それは本当にどこにでもある景色なのだ。

ゆるやかに続く丘があり、畑がある。砂防のためにわずかに残された林がある。
中世以来人間が森を切り開いてきた典型的なヨーロッパの田舎の風景だ。
それが、窓ガラスの水滴と朝のぼんやりとした頭、列車の進むスピードなどの様々な要因によって、このような景色が出来上がるのだ。

以来、僕は度々このリヒター的世界を体験する、けれどいつもそれは手の届くところにありながら自分の手に入らないものだ。
なぜならそれは、僕が窓を開けたり、外に出てしまったら手に入らない景色だからだ。
それはいつも移動している窓の外にしかない。

列車が止まり、僕はプラットフォームに降りて空気をおもいきり吸った。
朝の冷たい湿り気を帯びた空気は、肌に心地良かった。

追記
ピカソのゲルニカは良さがよくわからなかった。なぜならその絵は防弾ガラスに覆われていたからだ 。(ゲルニカは政治的な意味のある絵であるために、テロリストにねらわれている)
防弾ガラスに覆われてしまうと、絵というものはその感情というか微妙なニュアンスといったものが全く伝わらなくなってしまうのだ。
だから、レオナルド ダ ヴィンチのモナリザなんかも、全く良さが伝わらない。それは3億光年の彼方にあるように思える。

王立ソフィア美術館のダリはかなり粒ぞろいだった。
フィゲラスのダリ美術館にある絵の質よりも明らかにレヴェルが高い。(ダリ美術館は美術館というよりもおばけ屋敷に近い。)

GERHARD RIHITER [ゲルハルト リヒター]
1932年東ドイツ ドレスデン生まれ
1961年に西ドイツ デュッセルドルフに移住
以来現在に至るまで現代美術の第一線で活躍
日本でも美術書を扱っている書店に行くと必ず平積みになっている人気作家だが、なぜか大規模な回顧展は行われていない。
MOT 東京都現代美術館には常設展示されている。


行って来ました!!ATLAS展(川村記念美術館)終了

で、どうだったの?

ワタクシには、ヒジョーにおもしろい展示内容だったのだけれど、普通の人にはどうだったのだろう??

自分の場合は、リヒターの回顧展を見てるから、その制作プロセスの全貌の解る、ATLAS というのはおもしろくてしょうがないのだけれど、一般の人は本物のリヒターの絵画を見たことのある人ってすごく少ないわけだよね。だって、回顧展やってないわけだからさ、日本では。

ま、ワコウとかフジテレビギャラリーとかで見た人はいると思うけど、数にしたらちょっとなわけで、みんな本とかでしか見たことないわけじゃない?ほとんど。

なんか、順番が逆のような気がするんだよね、レトロスペクティブ(回顧展)をやってからATLASなのでは??

逆の場合も、それはそれでおもしろいのかもしれないけど...

ご意見お待ちしています!!

それはそれとして、この展示は一筋縄ではいかない奥の深さを感じている。

一回で彼の意図の全貌を把握するのは不可能に近い感じがする。

よって、その内にリヒター論を載せることを約束しましょう。

川村記念美術館はヒジョーに良い美術館なので、セレクションも一流だし、企画展もいけてるし、ロケーションは良いし、建物もいけてる。

機会があれば、是非足を運ぶことをオススメします。遠いけど...

ただ今、ゲルハルト リヒター展 開催中

5月18日(日)までトーキョーワンダーサイト

東京都文京区本郷2-4-16

www.tokyo-ws.org

リヒターの最近のアブストラクトペインティングを中心に、リヒター自身が選んだ27点の作品が見れます。

行くしかない!!

終了

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