ANDARUCIA... GUADIX/アンダルシアへ...グアディクス 洞窟住居の街


グラナダのユースホステルからバス亭まで、地図上は近いはずなのだけれど、延々と迷う。
やっと辿り着いたバス停は、やはり近かった。


洞窟住居のある街グアディクスは、グラナダからバスで約1時間。
バスはアンダルシア独特の幾何学的な畑が延々と連なった中を走ってゆく。
キュビズムが産まれたのは、セザンヌからの影響もあるだろうが、スペインの景色そのものから産まれているような気がしてくる。
人間が手を加えて作った畑と大地のうねりがからみあい、具象であって抽象的な景色がアンダルシアには拡がっている。
微妙なカーブと直線、絶妙な色のバランス、人が創り出した景色がこんなにも美しいことを知る。
それは自然破壊かもしれないけれど、疑いようもなく美しかった。
この景色があったなら、抽象絵画というのはごく自然に産まれたのだろうと思う。


バスはグアディクスの街に静かに停まる。
グアディクス、ああグアディクス、なんて良い街なのだろうか。
カテドラルから路地を入って一目で気に入ってしまった。
白い壁と入り組んだ通路、窓やドアのトーンが統一されている。色は自由だ。
治安がいいらしく、玄関にドアが無い家が多い。
きれいなストライプのカーテンがかかっているだけ。
生活の香りがする。


内装工事をしているおじさんにオラ!と挨拶したら、ちょっと待っててくれと言われて(多分)、中に荷物を運ぶのを手伝わされてしまった。
おまえは若いんだから、わしの手伝いをするのは当然だという感じのこのおじさん。
でも、グラシアスと言ったおじさんの笑顔がとても素晴らしかったので、良いことしたなとちょっと思う。
さすがにど田舎だけあって、東洋人が珍しいのか道路工事のおじさんもやたら愛想がいい。
そういえばアジア人を一人も見ていない。


洞窟住居クエバヒーロの一つは資料館のようになっていて、中に入れるようになっている。
中に入るとヒンヤリと涼しい。
アンダルシアの建築は、厳しい日差しと暑さを避けるために、壁がもの凄く厚く出来ている。
そしてその壁は漆喰で白く塗られている。太陽の光を跳ね返すためだ。
目がくらくらするような強烈な日差しの中で、真っ白な壁は輝いて見える。
その輝いて見える美しい壁は、ただ美しいだけでは無く、生活の必然性の中から産まれている。
クエバは斜面を一部掘って、その上に土を盛った作りになっていて、上には芝生が植えられているものもある。
まるで最近流行のエコ住宅のようだが、昔の人々が考えた、厳しい自然と共存する合理的な建築は、現代の最新の問題にも対応するような優れたものなのだ。
ほんとに穴を掘って、その掘った土を上にかぶせて、漆喰を塗って出来上がりというこの超合理的な建築の内部が、これ程ヒンヤリとして気持ちイイとは!!
外は連日40度を越す暑さだというのに、この洞窟住居の内部はクーラーなど全く必要のない涼しさなのだ。
もっとも、湿度の多い日本で同じ建築をやったら、じめじめして住めたものじゃないと思うが...
湿度の極端に少ないアンダルシアだから出来る建築なのだった。
このように、土地にある素材、地形を利用して、その土地の環境とうまく適合出来れば、こんなに魅力的な建築、街並みが出来るのだ。


この建築、問題は換気で、外には煙突が何本も立っているのに、室内にはその穴が無いのはどういう訳だ?
空気は淀んでいないので、換気は行われているはずなのだけど、もしかしたら、あの小さな穴がそうなのだろうか?(それにしては小さすぎるような)
謎は深まるばかり。
管理人のおじさんに聞いたのだけれど、スペイン語の説明で...うーん、ワカラン。
この洞窟住居の屋根の芝生に、デッキチェアを並べて昼寝したら気持ちイイだろうな。
眼下には、自然と建築の中間のような不思議な洞窟住居が立ち並んでいる。
文明化が進み、この古い街並みも大分空洞化が進み、廃墟に近くなってきていたのだけれど、近頃はこの建築の良さが見直され、アーティストなんかが新たに移り住んでいるらしい。
それで、道路工事や左官屋さんが結構いたのだな。
彼等の愛想がいいのも、新たな人々がやってきて街に活気が戻り、自分達の仕事も増えるからだと考えれば納得がいく。
いずれにせよ、彼等の手でこの素敵な街並みがもっともっと素晴らしくなるのを願いたい。


それにしても、ユナイッテドカラーオブベネトンという会社はスゴイ!世界中のどこにでもある。
こんなド田舎グアディクスの裏通りにもあると思ったら、ロンダでも見つけたゾ。
なんてでかい会社なのだろう。全然関係のない話しではあるけれど...

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