2002.9.23 JAPAN VS U.S.A 日本対アメリカ



評価
GK楢崎 6.5(好セーブを連発したが、PKを一本も止められなかったので)

DF中澤 6.5(ミスもあったが、相変わらず強いディフェンス)

森岡 5.5(マークがずれる、スペースが空くシーンが目立った)

松田 6.0(カバーしきれない部分があった)

MF酒井 6.5(守備も良かったし、正確なアーリークロスでチャンスを作った。ただし、押し込まれ過ぎているところも)

明神 6.0(中盤の守備は良かったが、ディフェンスの裏のカバーが足りなかったのでは)

稲本 6.5(相変わらずの運動量と身体の強さを見せた)

中田英 6.0(相当調子が悪そうで、シュートミスを連発。PKもはずした。ただし、ボールキープの強さもあったし、決定的なスルーパスや飛び込みもあり、調子が悪いなりに良くやっていたのではないか)

中村 6.0(ボールを持ちすぎて奪われることが多く、ピンチを招いた。それでも時折見せるピンポイントのパスは凄かった)

三浦 6.0(ドリブル突破は見事だったが、守備で左サイドを破られる場面が目立った)

FW高原 6.0(競り合いの強さは見せたものの、肝心な所の技術がまだまだか)

柳沢 7.0(素晴らしい出来、効果的な裏への飛び出しと、ワンタッチプレーでチャンスを作った)

トルシエ 3.0(なぜ、明かに疲れが見えていて、判断が遅く弱くなっているチームに交代の選手を投入しなかったのか理解できない。コーチとしては一流だが、現場監督としては三流かもしれない)

審判 3.0 (不可解なジャッジを連発、オリンピックレヴェルの審判では無い)

解説 5.0
実況 5.5


解説
まさか、よりによってアメリカに負けてしまうとは、これだからサッカーは難しい。
アメリカは良いチームだったが、南アフリカやブラジルよりも明かに弱く、スロバキアよりも強い位のチームだったように思う。
70分に三浦を投入するまでは、ほぼ予想通りの展開だった。
その後、すぐに同点に追いつかれても、慌てることもなかった。
チャンスは多かったから、いつでも点は取れるように思えた。
事実、その後すぐに高原がゴールを決め、このまま楽勝かと思っていると様相が変わってくる。
日本が押され始めたのだった。
アメリカの必死の攻撃に、日本は下がり始め、パスは繋がらなくなり、こぼれ球は拾われるようになる。
日本はカウンターの怖さもさほど見せられなくなっていた。ただ単に押されていたのだ。
アメリカに決定的なチャンスが何度か到来し、楢崎が好セーブをみせたり、中澤がカバーしたりしてなんとか失点を防いでいたが、このままでは失点は時間の問題のように思えた。
このような時、失点を防ぐ方法がある。
それは交代選手を投入することだ。
フォワードに足の速い選手を入れて、カウンターを狙うとか、中盤に運動量の多い選手を入れて、組織を建て直し、こぼれ球を奪われないようにしたりすることはもちろん、やる気のある、エネルギーの多い選手を投入することで、組織は生き返るのである。
まして、この場面では相手も消耗していたので、ドリブラーの本山を投入でもすれば、相手ディフェンスが混乱して、主導権は日本に傾くように思えた。
しかし、トルシエは動かなかった。
そして結局、最後まで動かなかった。
日本は案の定、酒井のファウルを取られ、PKを決められて同点に追いつかれた。
このPKはほとんど、アメリカの演技を審判がミスジャッジしたように思われるのだが、あれだけ攻められていれば、こういうことも起こりうるのだ。
丁度、EURO2000の決勝、イタリア対フランスで、イタリアが同点に追いつかれたのと同じ様な時間帯だった。
後ちょっと守りきれば勝てる。
でも、多くの場合、守りきれない。
なぜならば、守るということは、守ることでこちらが有利になるような形で守らなければ守れないからだ。
相手に精神的に有利にさせてはならない。
ただ守ろうと思った場合、逆襲の機会が奪われて、相手が驚異を感じなくなる為に、相手がいけると思って怒濤の攻撃を仕掛けてくることになる。
そうなると、冷静な判断や組織が回復する余裕が無いまま攻め続けられるので、些細なミスからでも失点する確率が増えるのだ。
延長戦、日本は何度か決定的なチャンスを迎えたが、得点することは出来なかった。
この場面で、選手を責めることは出来ないように思う。
選手はあまりにも疲労していて、ゴール前で正確な技術を使うことはとてつもなく難しいからだ。
もしこれが、入り立てのフレッシュな選手だったら、苦もなく決めていただろう易しい場面だったのだが...
EURO2000の決勝、延長戦で、フランスの投入したばかりのフォワード、トレゼゲが決勝ゴールを決めたのは偶然では無い。
トレゼゲはフランスのエース、アンリやアネルカに比べると一枚落ちるようなフォワードだが、このように双方が疲労した場面では相対的に優れたフォワードになるのだ。
しかし、日本は交代枠を2人も残したまま試合を終えた。
そして負けた。
PKで中田が外したことに特に驚きは無かった。試合中からシュートを外しまくっていたからだ。
中田は明らかにトップコンディションでは無かった。
過去に大事な試合でPKを外したエースは数多い。
ジーコもプラティニもロベルトバッジョもPKを外した。
エースにかかる重圧からなのか、それとも、調子の悪い時でもプレーしている為なのかは解らないが、ともかくそういうものなのだと思う。
オリンピック代表のシドニーは終わった。

日本は明かに強くなっている。
しかし、まだその強さは足りない部分が多い強さだ。
その足りない部分の強さは、この大会のような本気の戦いを積み重ねることによってしか得られない強さである。
そのような試合をいかに積み重ねられるのかが、2002年に結果を出せるかどうかのキーである。
僕には疑問が二つある。
それは、日本サッカー協会がそのような試合を本当に組めるのか?という疑問であり、もう一つはトルシエ監督の現場監督としての能力である。
トルシエは育成コーチとしては、とても優秀である。オリンピック日本代表がもの凄く強くなっていることは確かだし、同じ強さをいくつもの組み合わせで使い分けられるようなフレキシビリティーをチームに与えた。
そう、準備は完璧だった。
しかし、トルシエの試合中の選手交代については、全くだめだった。
なぜ、あれ程の周到な準備をしたのか全く解らないような消極的な選手交代で、試合の流れも全然読めてないのではないかと思った。
周到な準備の能力と、現場での流れに応じた指揮能力は、全く別のものだ。
それは、名作曲家、名編曲家が必ずしも名指揮者では無いのと同じことだ。
2002年の現場監督は別の人を探すべきだと僕は思う。
コンセプトはこのままでいい、トルシエは総監督でいいのではないかと思う。
現場監督は、状況に応じて、素早く決断の下せる、経験豊富な監督がいい。
それは、例えば、ベンゲルでも駄目だ。
もっと積極的に流れの読める人が必要だ。
そうすれば2002年のベスト4が見えてくる。

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