日本対フランス 2001.3.24


一言で言えば、あまりにもショッキングな敗戦というべきか?
日本は強すぎるフランスに対して全く為すすべなく敗れた。
一対一の局面ではことごとく負け、簡単なフェイクであっさりかわされ、圧倒的なスピードで置き去りにされた。
通用した選手は?中田英寿ただ一人。
これじゃあ、ヨーロッパのクラブチームから誰一人お呼びがかかるはずもない、そんな試合内容だった。
なんでこんなに酷いことになってしまったのだろう?
あの強かったアジアカップは幻だったのか?

一番大きな原因はフランスが滅茶苦茶強いということにあるのは明らかだ。
世界最強の名は伊達ではなかった。

コンディションの差もあっただろう。
日本は今、シーズンに入ったばかり。
シーズン終盤に突入しようとしているヨーロッパの選手とはコンディションが全く違っていて不思議ではない。
シーズン最初というのは身体もきれていないし、コンビネーションも今一になりがちだ。
今シーズン最初のバルセロナやA.Cミランなどは、これがあの名門チーム?と目を疑う程のひどい出来で、とてつもなく下手くそだった。

雨が降ったというのも大きかった。
競馬を見ると解るのだが、雨が降った時のフランスの芝は想像以上に重いのである。
そのためにフランスで走ったことのない日本の一流馬が、しばしばフランスで大敗してしまったりする。
でも、これはフランスの馬よりも日本の馬が劣っている訳ではなく(事実、ジャパンカップでは同じ馬と対戦しても大抵日本の馬が勝つ)要するに慣れの問題と、その環境に対応する為の資質の差にあるのだ。
サッカーでも同じことが起きたのだと思う。
重い芝を克服するには量的なパワーが必要だ。
それに対して日本の軽い芝に一番必要なのは質的な瞬発力だ。
日本人はとてもスピードがあると言われているが、それは軽い芝に限っての話で、雨が降ったら、明らかに日本の選手の方がボールの近くにいるのにも関わらず、遠くに居るはずのフランスの選手に何度もボールを奪われていた。
しかもフランスの選手達は皆、雨が降って重くなりバランスを崩しやすい芝の上で、水分を含んで重くなったボールを使って、晴れている時とほとんど変わらないスピードと正確さで動き、ボールをコントロールし、パスを廻していたのである。
中田英以外の日本の選手は、晴れた日の50%位のスピードで、バランスを崩しつつ、コントロールミスを繰り返していた。
これがアウェーの戦いというもので、こういう苦しい戦いをしていかないと本当の実力(どんな条件下にあっても実力を発揮し続けるということ)はつかないのであろう。
もっとも、2002ワールドカップは日本でやるので、日本の資質は有利なのだけど。
ただし、前から気になっていたのだけれど、日本は雨が降るとからっきし弱い様に思う。これは実に大問題で、何しろワールドカップは梅雨時に行われるのである。
早急に解決したい問題である。

中田英は特別スピードのある選手ではないが、ただ一人雨の中をフランスの選手と対等かそれ以上の動きを見せていた。
ようするに鍛え方と慣れの問題と思う。
フランス人は子供の頃からこういった芝でプレーしているのだろうし、中田英はどんな条件下であっても常に最高の力を発揮できるように鍛えているし、経験も積んでいるということ。

日本の選手達はもう少し時間があれば、この慣れない環境に対しても適応していったと思うのだが、フランスはそんな時間を与えないように、序盤から全力できた。
その為に日本は早い時間に失点を重ね、フランスのあまりの強さに修正の効かぬまま、パニック状態に陥ってしまったように思える。
この試合における日本の収穫は何も無い。
課題はいっぱいある。
そして、どうしようもない問題点もいくつか明かになった。
その一つがディフェンスである。

まず第一に、松田、森岡、服部のスリーバックでは身体能力的に、高くて速くてうまいフォワードが相手にきたら、まず止められないことが解った。
なぜってあっという間に置き去りにされてしまうし、ヘディングでも競り勝てないのだ。
これは、はっきり言ってどうにもならない。
よってディフェンスの要の選手が誰かははっきりした。
中澤である。彼ならば一対一でも簡単に抜かれないし、ヘディングでも競り勝てる。
こういう選手が最低一人でもいないと(出来れば二人)世界の超一流とやった時にはどうにもならない。(秋田が欲しい!!)
それから、左サイドを名波と中村と服部でケアするのは明かに無理だ。
はっきり言うと足が遅いのだ。簡単に振り切られている。
フランスワールドカップの時の相馬と名波もそうだったのだが、日本の左サイドの足が遅すぎる。
左サイドには最低一人は足の速い選手を入れること。

メンバーのバランスも悪かった。
パスを出したいタイプの選手が多すぎるのだ。
シンプルに動き回ってパスを受ける選手が少なすぎるからパスがまわらない。
簡単にパスコースを読まれてカットされてしまうのだ。
前にも述べた通り、日本のやろうとしている攻撃的なプレスサッカーには、森島や北澤のようなタイプの選手が絶対に必要である。
彼等がいないと優れたパスやゲームメークの得意な中田や中村の素質が活かせないのである。
日本がカサブランカでフランス代表と互角の試合が出来たのは、相手が調整途中だったからでも、本気じゃなかったからでもなく、あの時のメンバー構成がいけてた為だ。

日本代表の中でデサイーのような優れたディフェンスの選手を相手にしてキープ出来るのは、恐らく中田と柳沢位だと思う。
だから、もっと相手のいない所に走る選手が居ないとだめだし、逆サイドへの展開をしないとだめだ。
それを出来るだけの技術を選手達は充分持っている。

名波が言っていたのだけれど、1,2メートルのパスの精度がずれるとか、技術が足りないとか言っていたけれど、恐らく技術が足りないのではなくて、トルシエの言うようにフィジカルが足りないのだと思う。
つまりボディーバランスが悪いから適切な姿勢や場所でトッラプする形に持っていけないのだと思うのですね。
前に名波は負のサイクルに陥りがちだと書いたけど、この試合では中田英を除く全ての選手がこれに陥っていた。
つまり情報処理が多くなって重くなる=スピードが鈍るということに、ガンバりすぎて身体が疲れる、鈍るということが重なり、後一歩身体が前に出れば楽に処理出来るボールをコントロールするのに余計な体力を使ったり、パスミスをして逆襲されてさらに体力を使ったりで、どんどん負の循環にはまりこんでしまうためと思われる。

やっぱり本当に強くなりたかったら海外に出ないとだめだと思うよ。
なんか今回の日本代表は初めて海外旅行に行っておたおたしてる人みたいだったもの。
向こうで暮らして試合してれば直ぐに慣れると思う。
色々なことにね。
その為には村社会から脱して近代的な自我を身に付ける必要があるのだけれど、要するに大人になることだよね、でもそれが日本人には一番難しいらしいんだよね。
みんな共同体に入るだけで、誰も本当の意味での大人にならないからね、この国の人は。
多分、最初トルシエは日本代表にそのことを伝えようとしていたのだと思う、フランス人だからね彼は。
フランス人にとって当たり前のことが全然当たり前でないこの国のやり方にビックリしたのだと思う。
それで名波に一生リーダーになれないタイプと言ったんだろうね。
名波は典型的な日本人だからさ。
でも日本的なチームワークというか和は機能してアジアカップを手にしたわけだよね。
トルシエは日本式の組織力のすごさをを学んだのだと思う。
だけど日本型の組織は崩れ出すと弱いんだよね、個人が弱いから歯止めが効かなくなる。
中田英は近代的自我を持った大人だから組織がどうなろうと強いんだけどね。
だから海外でやっていける。
実のところ中田以外の日本の選手が海外に行ってだめなのは、その辺りから来るもののような気がする。
2002年はともかくとして、2006年は少なくとも半分以上は海外でプレーしてるようじゃないと全く通用しないと思うよ環境的に。

ってなわけで、それではまた。

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