本当においしいもの



死ぬほどおいしいものを食べたことがあるだろうか??


僕は2回ある。


一度目は小学生の頃、登山をしに奥多摩へ行った帰りに食べた御嶽の蕎麦。
これがうまいのなんのって忘れられない味だったのだけれど、後に車でわざわざその蕎麦を食べに行ったら、別にどうということのない味でひどくがっかりしたのを覚えている。


これはいったいどういうことなのだろう?

まず、考えられるのは、味が変わってしまったということだよね、実際にまずくなったということ。

次に考えられるのは、最初に食べた時は登山をして、疲れ切っていて、のども渇き、お腹がものすごく空いていた。だから身体が最大級に蕎麦を求めていて、食べた時に得も言われぬ程うまく感じたということだ。

恐らくきっと、どっちも真実なのではないかと思うのだが、このように、食べ物がおいしいというのは、こちら側がいかにそれを求めているか、その求めたものがいかに身体にとって必要だったのかが、極めて重要な要素なのである。
例えばスポーツドリンクなんて、普段はちっとも飲みたくならないし、うまいとも感じないのだが、のどが乾ききった時は無茶苦茶欲しくなるし、またものすごくおいしく感じられる。


ただひたすら美味なものも、この世の中には存在する。

二度目に、死ぬほどうまい料理にありついたのは、ベルギーだった。
ベルギーに自分と同じ名前の街、ゲントという街があるのだが、ここのトリオというレストランで食べた、ビスクドオマール(オマールエビのスープ)は、すさまじい美味であった。

どれくらい美味かというと、そこまでわざわざ飛行機に乗って食べに行きたくなる程の美味である、と言えばわかっていただけるだろうか??


いったいどういう味なのかというと、オマールエビの殻や内臓と野菜からとった濃厚な出汁に、アルマニャック酒というブランデーの一種を加えるのだけれど、その芳香な香りと濃厚な旨味が渾然一体となって、官能的ですらあるのだ。
これは食体験としては全く異次元の体験であり、むしろ芸術的感動に似ている感じすらした。

人間はここまでおいしいものを作れるのだ、なんて凄いのだろう!!

しかもその値段たるや、僅か700円余りなのである(しかもスープボウル一杯分、スープ皿二杯分もある)
この料理は、何度食べてもやっぱり異次元においしいので、勘違いではないはずだ。

こういう心の底から、あるいは身体の底から素晴らしいものに出会うと、考えざるを得ないようになってくる、本当においしいものって何だ?と。

という訳で、始まります、食への旅。 

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