ANTWERPEN/アントワープ派のデザイナー達



アントワープのデザイナー達はとても個性的であり、これがアントワープだと言いにくいのだけれど、にも関わらずある種の共通する要素は存在しているように思える。
その一つが、深い芸術や哲学、コンセプトに対する認識、あるいは理解といったものである。


アントワープは中世ギルドの栄えた毛織物工業の盛んなフランドル地方の中心都市であり、同時に港を中心にして貿易がおこなわれた商業都市でもあった。
それと共に、カトリックとプロテスタントの思想対立を分ける地域でもあった。
こうした中でルーベンスのような大芸術家が育まれていったのであるが、この街が育んできた芸術の跡はそれこそ街中にある。

ベルギーという国はフランスの影響と北部ネーデルランドの影響をともに受けているので、例えばオランダの質素であまりうまくない料理とフランスのおいしい料理を見事に化学融合させ、とてつもなくレヴェルの高いグルメ王国になっているが、そのような異なった文化、思想のおりなすダイナミックな反応によって奇跡的とも言えるような高いレヴェルの生活芸術を産み出したのではないかと思える。

もちろん今日のようなファッション都市としてのアントワープを築いたのは、王立芸術アカデミーという類い希な素晴らしい教育機関があってのことだが、この学校の教育方針がこうした芸術や哲学を学んでそれを形に置き換えられるだけの技術を身につけさせることにある、とすれば、この街の抱えている歴史的遺産が現代の衣服に滲み出ていることは否定できない。


はっきりと言えることはアントワープ派と呼ばれるデザイナー達の作品が、飛び抜けてスゴイといえる部分があることである。
それは平均点が高いというあり方ではなく、ある種の本質を具現化したフォルムやマテリアルによる芸術と呼べるかもしれない。


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