ニコラスフェルメールの輝き

フェルメールの絵は世界中の多くの人々を惹き付ける。
そのわずか30cm四方位の小さな平面の中に、彼の世界は完璧に息づいている。
世の中に大作で人を虜にする画家はかなり居るが、これ程小さな作品で人を魅了してやまないのは恐らくフェルメールだけだろう。

遠近法による奥行き表現の見事さ、人々の表情や仕草による独特の時間が止まったような感覚、カップに注がれるミルク、レースを編む手、手紙を読む手の指先。
それに表情だ、意味ありげな手紙を読んだ時の驚いた顔、誰かに呼ばれて振り向いた時の一瞬の表情、仕事を一段落した時に見せる安堵した表情。
日頃自分達が目にしている、けれどもほんの一瞬しかない今だけという世界が彼の絵の中で永遠に留まっている。
その世界では、全てのものに動きが与えられていながら、全てのものが止まっている。
日常的な非日常??


彼の絵のブルーの見事さはよく知られているところだ。
そのブルーは宝石を砕いて作られたトクベツなブルーだから、彼の絵が宝石のように見えるとしても別にオドロクことは無い。本当に宝石そのものなのだから。

彼の絵は、全体を見ても素晴らしいけれど、一部分を取り出してみてもやっぱり素晴らしい。
それは色がたとえようもなく美しいからだろう。
そしてその美しい色と光は、絵の中の空気さえも体験させてくれるから、僕達はその絵に惹き付けられないわけにはいかないのだろう。


フェルメールは毎日眺めていても飽きないタイプの絵だと思う。カラバッジォの絵は素晴らしいが、決し
て毎日見たいとは思わない。
けれど、フェルメールを毎日見れるような幸せな人はこの世の中にほとんどいない。なぜなら彼の絵は世界中に30点位しかないからだ。

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