#ビニールクロスって必要なの??contemporary creation+ のショップを作るにあたって考えたこと 

店舗の引き渡しをする時に不動産屋が、壁のクロスが汚れているので張り替えた状態で引き渡しますよと言うので、ちゃちなビニールクロスを張られると店内がビニールの質感になってしまうので困ると言ったら、こちらの指定以外の部分はそちらの店の造作だから、こちらの指定のクロスしか張れませんと言われた。

仕方がないのでクロスを剥がした状態で引き渡してもらうことにした。
ダメだったら後で考えよう。
そう思ってクロスを剥がしてみたら、これが案外というか、予想通り良かった。
意図しない偶然が美しかった。



身近なものについて考えたい。
例えばビニールクロスなどというものが、今どきのマンションやらアパートやらのほとんどに貼られているけれど、それって本当に必要なのだろうか??
約10坪のお店のクロスを貼り替える見積もりは大体17万円だった。
このビニールクロスは時期が来ると汚れてゴミになる。
確かにそれを貼り替えれば壁がきれいになって新品同様になるのかもしれないけれど、本当にそれが必要か?と言うと必要ないという人が案外多いんじゃないだろうか?

でも、今のふつうのシステムではこんなの別にいらないと思っても勝手に付いてきてしまう。
便利ですキレイです、みんなやってくれます等々...
それを止めるには、それが本当に必要なのか考えて意見を言って分かってもらう必要がある。

恐らく世界を変える(というのは大袈裟な表現なのだけれど)そういうことって、実はこういうことなのだ、と思う。



ベニヤ板で出来たついたての壁を前に物件を借りていた布地屋さんから譲り受け、これを改造して壁とフィッティングルームを作ろうと思った。
ところが、ベニヤを角材でサンドイッチ構造にした板をのこぎりで好みの長さに切るのは、ほとんど不可能なのだった。
のこぎりが動かない上にベニヤが直ぐに割れてしまうのだった。
それに圧倒的な手間がかかるのだった。
ベニヤの板は1枚約580円也。それなのにそんな手間暇かけてリサイクルする人がいるだろうか??
ベニヤ板をリサイクルするのはほとんど現実的では無いのだ。
言うまでもなくベニヤ板の原料であるラワン材は熱帯地域のプランテーションで作られているものだ。
それは熱帯雨林を植林に変え、あっという間に消費され捨てられていってしまう。



ちなみに、当店で商品棚に使っている杉板は、数十年前の廃材を削ってきれいにしたものだ。
これを美しくする作業は大変だったけれど、実にすがすがしく楽しい行為だった。
見た目もカッコイイと思う。
その板が作られた当時の日本は、日常のどこにもラワン材のベニヤ板など使っていなかっただろう。そんな時期に作られたものは、繰り返しの使用に耐えることが出来る。
僕等は技術や生活は日進月歩だというふうに思い込んでいる。
でも、現実は必ずしもそうはなっていない。



カッコイイお店を作りたいと思う。
けれど、表面的に着飾ったようなやり方で作ったような、今どきの内装の店が数百万円とかそれ以上のお金を費やされて作られて、数年で壊されていく(下手すると半年とかで!)のを嫌というほど目にする。
ミッドセンチュリーが流行りだの何だの...
消費させていくための仕組みを嫌というほど目にする。
それは数年で飽きられて捨てられていく。
なんか虚しくないか??
一見格好良く見える今時な店って、そういう風に考えると凄くカッコ悪くないか??


だから本当にカッコイイ店ってなんか違うんじゃないかと考えていて、まだ全然いけてないし納得もしていないのだけれど、こういう店を作ってみました。
ちなみに改装は4日間と費用は大体8万円くらい(人件費込みで)で行われました。
こういう環境で一流のデザイナーズの服を売る、そんな店があっても良いのではないかと思います。

この店は基本的にほとんど誰もやってないようなやり方(様々な意味において)をして、根本的にラディカルであることを目指していますので、全てが試行錯誤で穴とかダメなところとかいっぱいあるのですが、だけど、こういうやり方をしている人が世界に一人くらい居て、それが何とか生きていけるということを示せたら良いなと思っています。

これからもよろしくお願いいたします。

04

LIFE