ATTITUDE

「ものを売るにあたって初めに考えたこと」


まず、自分がものを販売するにあたって、何でこれを売らなきゃいけないのか?と考えたわけです。ものを生産すると当然環境に負荷がかかるわけです。それなのに、それを本当に自分が売らなくちゃいけないのか?ということですよね。
ものが有り余っているこの時代に。
自分がそれを売らない方が圧倒的に世界の為かもしれない訳です、本当は。



生活必需品ならまだ解るんです。
それが本当に必要とされているから売るわけです。
それがなければ死んでしまうようなものについて、それを選択しないということは出来ません。

衣服は生活必需品ではあります。
でも、現実には、人々の果てしない欲望かマーケティング戦略のために生活必需量の何百倍も生産されて消費されているわけです。
それによって、もちろん、綿花や麻を作る人や糸や生地を織る人、流通や販売やデザイナー、あらゆる人がそれから利益を得て生活しています。
彼等の生活の為には確かにそれは必要なことなのです。



しかしながら、例えば綿花を大量に生産するということは、大量の灌漑用の水を必要とし、その地域の自然環境を一変させ、砂漠化を押し進めてしまうということがあるんです。(実際にカスピ海周辺ではとんでもない事態に発展しました)
それだけでは無くって、効率的に収穫しようとすれば大量の農薬や化学肥料を使わざるを得ず、それによって余計に環境を悪化させてしまう。
大量生産、大量販売と経済効率を考えれば、それを避けることは出来ません。



さらに言えば、中国の安い人件費で大量の衣服を生産し、大量の消費をすれば、中国は高度成長をどんどん達成し、いずれ先進国並みの消費水準に達してしまうかもしれない。
そうなった時に、中国の十数億人の人々が多消費型に移行してしまったら、様々な環境への負荷が現在の先進諸国の数倍規模に膨れ上がるわけです。
そしてそれは極めて差し迫った重要な問題であるわけです。
先進国としては、そうなる前に省資源小消費国へ転換して、中国のロールモデルにならなければいけない。
そうすれば、中国は高度成長以前からいきなり省資源小消費型の先進国に移行出来るかもしれないのだと考えます。



デンマークなどスカンジナビア諸国では、こうした省資源小消費型への経済移行が実際に(具体的なエネルギー削減目標と共に)始まっています。
彼等がエネルギー削減と共に取りくんでいるのは、実は良いものを作るということです。
よいプロダクト(耐久性に優れデザインに優れていて、使う程に愛着のわく商品)が流通すれば、必然的にそんなにものを買う必要性が無いわけですから、G.D.Pは下がるかもしれないけれど、(例えば木工製品の場合等、耐用年数が木の寿命と同じならば、当然森は枯渇せずに保たれていくわけです。)生態系は保たれて、しかも生活が潤うのです。
スカンジナビアでは元々環境が厳しく資源が少ないためにこうした良質なプロダクトを真剣につくることによって環境が守られているといった側面があるのです。

僕の友人でデンマーク人のデザイナー(正確に言うとデザイナーの卵で、親兄弟は当地で有名なデザイナーです。)がいるのですが、彼女は生地を作ることとか刺繍とは何か?とか、伝統文化を知るために装飾美術館の作品の修理をしたり...違う国の伝統文化を知るために日本に留学したり... と、本当に優れた作品を産み出すためにあらゆることをしています。
学校のシステムもとんでもなく勉強させられるそうです。卒業するまでにおばあちゃんになっちゃうとも言っていました。
(笑)


日本では、元々自然環境が豊かであるために、こうしたことを忘れがちですが、実際には本質を見失った粗悪な(デザインが理にかなっていないから直ぐ飽きる、質が悪い)アジアのマスプロダクト商品を日本が大量消費することによって森林の破壊や砂漠化がもの凄い勢いで進んでいるのでしょう。

基本的に日本の消費は、日本の環境をそれ程破壊しない替わりに、主に東南アジアの環境を悪化させているのだと思います。
(ディスカウントのホームセンターに行って商品を見てみて下さい!!ぺらぺらした合板のなんとか風の家具とか、ちゃちなプラスチックの家具とかしか見つけられないはずです。)
ちなみにプラスチックが悪いわけではありません。プラスチックだってプラスチックの本質を活かせば凄まじく美しいものが作れることはアキラかです。(僕が使っているヨーンチェアや、極端に言えばフェラーリだってプラスチック(FRP)なのですから!!

そういう「いわゆる安い商品」は、南北問題(発展途上国と先進国との経済格差)によって無理やり安くしていて、安い商品は大量に売れ続けなければならないので、繰り返し使えたり、価値観が持続すると売れなくなっちゃうからとても困るのです!!(おまけに、修理するより買う方が安いので必ずゴミになります)...という訳で質やデザインがなかなか向上しないということもあるのだと思います。



そして、それ故に流行があるのです。
長年アパレルの仕事をしていて、段々嫌気がさしてきたのは流行なんです。
流行のものは売れるんです。(特に女性ものの場合)
なぜ流行のものが売れるのかといえば、今アパレルでは(他の業界も含めてですが)グローバル化と業界再編が進んでいて、一部の大企業(特にルイヴィトンやグッチを含むLVMHグループとプラダのグループが他のブランドを買収して超巨大化した)が巨額の資金にものをいわせて、テレビや新聞雑誌などで大々的にキャンペーンをはるので、知らず知らずにみんな憧れてゆくのです。
それを大体、本来売るべき価格の2倍から3倍の値段で売るものだから(広告費や店舗の維持費が半端でないため、そのくらいの価格に成らざるを得ない)ほとんどの人は買えないで憧れだけが残ります。
それを見越して日本のメーカーは大小含めてコレクション写真を見ながら同じような服をつくるわけです。

(注、この記事はちょっと古いです。今はもっと知らない若いデザイナーの服とかをパクってることが多いです。しかも、ヨーロッパのアパレルの多くが東京のストリートファッションの影響を受けはじめたので、パリの最先端といわれているcolletみたいなセレクトショップ(実はただの観光名所?)でも日本の流行みたいになっちゃってます。そんなわけで、それが最新流行ということで東京に逆輸出されているのです。...で、まったくおもしろくない。)




雑誌は今年は何が流行るとか特集を組み、挙げ句の果てにこれとこれとこれを着るみたいなマニュアルまで作る始末。
そしてショップは世間で流行りはじめたものを敏感に察知してディスプレーしたり、商品を仕入れたりすると、注文を受けた下請けの小さな会社までそれを大増産するわけです。
それで、それがまた売れるんです。
なんか、みんなそれを着なきゃまずいんじゃないかという雰囲気をみんなで作ってるんですね。
だから猫も杓子も、ピンからキリまでのレヴェルの同じようなデザインの服が一斉に売られ、そして着られるわけです。
それがあるところまでいくと全く売れなくなる。
これはまずいという雰囲気が出てくるからです。
そして流行りすぎたから着れなくなってくるのです。
もともとそんなに大したデザインのものが流行ったわけでは無いので、大体の場合はどうでもよくなってくるのです。
そして次のものが欲しくなります。

この仕組みに乗っている限り、ものは売れるし、売れるものもわかるんです。
だから作る方も売る方も楽です。
そして、着る方も、皆と同じで安心できるし、大量生産のピンキリ品もあるから、手軽に安く済ますことも出来ます。
基本的に日本の大メーカーのやり方って、こういう方法が多いです。



でも、こうした流行のファッションを身に付けて、例えばパリやアントワープに行ってみて下さい。
多分、きっとなんだか、自分が全くお洒落じゃないと感じると思います。
少なくても、僕にはそういう人達がすごく格好悪く見えるのです。

それはなぜでしょうか?
それにはいくつか理由が考えられるのですが、一つには、本当の意味で似合っていない、あるいは身についていないからだと思います。
これだけ流行が早く通り過ぎてしまえば、作る側も、ものを真摯に(ディテールやフォルムを追求したり)出来ないし、消費する側も、いわば脅迫神経症的に買わされているだけで、全く身になっていない。




こんなに沢山の人が流行の衣服に身を包んでいる国は、多分、世界で台湾と日本だけだと思います。
ヨーロッパなんかで流行云々を気にしてる人って実はほんとにごく一部なんです。(ほんと、業界関係者だけなんじゃないかな?)
それはヨーロッパの国の人々が個人主義的で、ファッションが自己表現であり自分の趣味や生活を投影したものだからです。

では、日本で流行を追わずに自分に似合う服(体型や生活様式や趣味、哲学に合う)を選ぶにはどうしたら良いのでしょう??

それは、多分、ただ質の良いプロダクトを作ったり買ったりするだけでも駄目で、世間の常識や流行云々を言う人達よりも、ものごとの本質を解ったカッコイイ、あるいはその人、その場所、その世界に似合った服を着て、こういう生き方の方がずっとカッコイイのだと胸をはって言う事が出来るようになることだと思います。
そうしてみて、初めて自分らしい哲学を持って新しい、大量生産大量消費後の生活様式に移行できるのだと考えています。



そんなわけで、当店の基本方針は...

1,出来るだけ必要では無い商品を産み出さない。


そのために、出来るだけ商品はストック(過去の商品)やサンプル(製造や流通や販売の段階で生じるものを産み出すだめに必要だけど、本来販売目的ではないもの)を使用し、あるいは、もっと素晴らしいデザインを産むためにリメイクする。)

2,新しいクリエイションを産む(あるいは買う)のは、今、世間に出ることが必要と判断する才能のあるクリエーターや組織に限る。


3,流行や何が売れるからというのに関わらず、本当に良い(あるいはおもしろい 笑)と判断したものを仕入れる。(出来るだけ)

これが、僕が最初に「ものを売る」にあたって考えたことです。
今読み返してみても、大変なことを考えてしまったという感じ(笑)で、
実際にはまだまだ実力が不足していて、理想通りには運びません。
けれど、これからもっと心に響くものやことデザインを、なんとかやっていきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

ショップの詳細は...CLICK HERE !!

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