フランス料理を極めてみよう!!その1


フランス料理は皿の中に宇宙を創るようなものだ。
ぐつぐつ煮える鍋の中は、まるで原始スープのような状態になっていて、それは新たな生命を産み出す過程に似ている。

試しに牛肉のトマトソース煮込みをつくってみよう。

日本料理の基本に さしすせそ(さとう、しお、す、しょうゆ、そーす) というのがあるが、フランス料理も基本的にこれと同じ過程で進んでいく。(もちろん、砂糖も酢も醤油も使わないわけだけど)

イタリア料理やフランス料理の煮込み系のレシピの最も重要な最初の儀式、それはタマネギをじっくり炒めることである。

まず、圧底の鍋に油(地中海系ならオリーブオイル、中部フランスならグレープシードオイル、もちろんサラダオイルでもかまわない)をおおさじ一杯強入れて、ニンニクと唐辛子を入れて火を着け、弱火にして香りを出す。

にんにくがキツネ色になったら取り出して、細かくみじん切りにしたタマネギ一個分を入れて弱火のままじっくりと炒める。
この時に塩は振らない。なぜかというと塩がたまねぎの水分を吸ってしまい、こげちゃってきちんとタマネギの甘さを引き出せないからである。
このタマネギを汗をかかせながら炒めることをソフリットと呼ぶ。
これが、さしすせそのさにあたる行為なのである。

フランス料理では砂糖は使わないけれど、タマネギや人参、セロリなどをじっくり炒めることにより、甘みを最大限の引き出しているのだ。

イタリアやフランスではこのソフリットを延々と20分30分とやっているが、日本のタマネギは甘みが強いので10分もやっているといい感じになる。

ソフリットをしている間に、肉に下味を付ける。
牛肉はバラ肉のかたまりみたいな安いやつでよい。筋張ってたりするほうが煮込むとおいしいのである。
塩はわりとたっぷりめに振る。
塩は水分を吸うので、肉を焼いた際に表面を焼きかため、旨味を閉じこめるのに役立つのである。
ついでに黒こしょうと、あればタイムやローズマリーを(無くても平気)肉にもみこんで、熱したフライパンに油を少しひいて肉を投入!!
表面を焼き固める。

そうしながら鍋に戻り、小麦粉を少量投入してタマネギと混ぜながら炒める(小麦粉を入れるとすぐに焦げるので注意!!)
この小麦粉が出来上がった時のとろみ加減を決定する。
地中海風なら入れなくても良い(トマトが多いから適度なとろみがつくのである)
ブルゴーニュ風の場合、トマトの量が減って赤ワインの量が増えるので、とろみがつきにくいから小麦粉でとろみをつけるのだ)

小麦粉が焦げない内にトマト(旬の季節なら完熟の生を、それ以外の季節は缶詰を)を投入してかき混ぜる。

火を少し強める。

ここに、表面を焼き固めた牛肉を投入!!

フライパンに残った油は捨て、肉が焦げ付いた部分に赤ワインを注いでへらでこそぎ落とす。
このことをデグラッセというのだけど、この料理の最も重要な部分の一つです。
肉が焦げ付いた部分がうまみ、つまりアミノ酸を創り出す素になっているからなのですね。これに赤ワインを注ぐと化学反応が起きて、あら不思議?とてもおいしくなるのでした。

このうまみ成分凝縮スープを鍋の中に加え、地中海風だったら水を、ブルゴーニュ風だったら赤ワインをさらに加えて、オレガノ、バジリコを入れて、ベイリーフを入れて、ふたをして弱火にして3,4時間ことこと煮れば、おいしい牛肉のトマトソース煮込みが出来上がっているはず!!


うまみを閉じこめたはずの牛肉は、しかし、序序にその牙城を崩されて、うまみをスープの中に放出していく。
けれど、時が立ち、煮詰まってくる頃になると、旨味を含んだスープが逆流して肉に入り込んでくるんですねえ。

いやはや、実に良く出来た仕組みだこと!!
地中海風ならペンネやフェトチーネなどパスタを添えて、ブルゴーニュ風ならゆでたジャガイモを添えて、さあ召し上がれ!!ボナペティ!!

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