バイヤー、ステファンシュナイダーを熱く語る。

ステファンシュナイダーのブティック(彼はあえてショップとは呼ばずにブティックという呼び方が、ださくて好きなのだそうだ 笑)はアントワープの大聖堂(フランダースの犬の舞台となった)からほど近いフルン広場からちょっと脇道に入った場所に、ごくごく控えめにたたずんでいる。

他のアントワープのデザイナーのショップが立ち並ぶ界隈とはちょっと離れた場所にある小さなショップは、1階と地下の2フロアからなっていて、東京(表参道)のショップと同じ建築家B-ARCHITECTSの設計で作られています。

知名度からすると、信じられないくらい狭い!!店内。10坪無いのではないかなー?地下は天井に頭をぶつけるほど低くて、岩をくりぬいた洞窟のような独特の雰囲気です。

僕が始めてステファンのショップを訪れたのは、たしか1998年くらいで、当時ステファンのキャンペーンのモデルもやっていた格好良すぎる男の人がお店に立っていました。

試しに何を買ったのだっけなー??メンズのパンツとシャツジャケット、それとレディースのブルゾンとワンピースとコートの中間のようなものだったと思います。
商品を買うと薄紙に一枚一枚丁寧に包んでくれて、STEFAN SCHNEIDER ANTWERPと印刷されたステッカーが貼られた手作りっぽい白い紙袋に入れてくれたのを憶えています。

その時は、布地(テクスチャーや色)の雰囲気が良いなと思っただけでしたが、帰国して友人達とあれこれ洋服の構造やフィッティングしてシルエットを見ているうちに、これはただものでは無いということに気付きました。

まず初めに気付いたのは、シルエットがとにかく美しいこと。
今まで色々な女の人に色々な服を着ていただきましたが、一番フィッティングした時に美しいと思った服のほぼ半分がステファンの服です。
他には、例えばJOSE LEVY やCOSTUME NATIONAL やNIEL BARETTや、美しい服を作っているデザイナーは色々ありますけどね。

ジルサンダー時代のジルサンダー(それから今ならKENZOのデザインをしているロイクライスベルグ)にも似て、ステファンの服には繊細さがありますね。それは生け花とか茶道とかにも通じるような、案外日本的なものです。

どういうわけか、ドイツ人やデンマーク人のデザイナーの中に、そういう和を感じさせるような繊細なクリエーターがいるのです。

そしてよく見るとそれはダーツの入れ方とか絞り方とかが普通とは異なったやり方になっているのが多いのでした。
そして、細かい工夫。

ボディーに洋服を着せた時に気付いたこと
全く別物のコートとスカートだったのだけど、コートの切り替え部分の縫製の跡と、スカートの切り替えの部分の縫製の跡が一致することに気付いた!!
ようするに、別々のものを合わせても、上から下まで切り替えが繋がって見えるのだった!!

最近は、特に様々な実験をすることも多く、よく見るとアシメトリー(左右非対称)になっていたり、腕がひねってあったり、一見ふつうに見えるのだけれど、どこかが違う。

美しいのだけれど、どこかが必ず崩してあって、シンプルだけど謎がある。
構造的に優れているのだけれど、詩的だったりする。

思うのですが、彼の服は作り手が楽しんでいるのが目に浮かぶような感じがするのです。毎回何かを(そんなに大それたことではなくて小さくて確かな楽しみ)を産み出してわくわくしながら作っている。そんな感じがします。

他のデザイナーの多くが才能が枯れていくのを目にする中(ラフシモンズしかり、A.Fヴァンデボルストしかり)彼は毎回、実に楽しいわくわくするような謎を秘めた作品や美しい作品やビミョーな作品を作り続けています。笑

彼はマルタンマルジェラのように革命的デザイナーでは無いかもしれませんが、少なくても彼の作品の似合う女の人をより魅力的に見せて、そうすることによって日常によりわくわくするもの、モチベーションが上がるものを提供し続けているのです。

先行きの見えない経済やデフレが進行する世の中、今、多くの人達が本当に必要としているのは、あー、世の中って悪くないな!と思えるような、美しかったり、謎だったりする、何だか明日もがんばって生きてゆこうとする前向きな姿勢をもたらすような、そんなステファンシュナイダーの服のようなものなんじゃないか?と、今考えています。

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