エントロピー、自己組織化、カオスの縁、エマージェンス



世界で最も重要な法則の一つであるエネルギー保存の第二法則によれば、全ての閉鎖系のエントロピーは、時間の経過と共に増大することがわかっている。

わかりやすく言うと、世界はどうしようもなく無秩序に向かっているということを、この法則は物理的に示している。
世界は、それが開放形(閉じられていないオープンな世界)でない限り、時間の経過と共に、必ず無秩序になっていく。

ところが、自分達が日頃感じているように、この世の中は必ずしも無秩序に向かっているのでは無いように感じられる。
例えば生物が誕生するとか、僕等が整理をして物を秩序よく並べ替えるとか。
でもこれらのことは、閉鎖系で起きているのではないので、エントロピー増大の法則とは矛盾しない。

つまり、このことは外部のエネルギーを使って秩序を産み出したもので、その秩序を産み出す過程において熱などのロスが発生するので、局所的には秩序が生まれているけれども全体的にはやっぱりエントロピーは増大していることになる。
それは解る。

けれど、世界全体を考えた時に、この世界全体が開放形だなどということがあるのだろうか?冷静に考えてみて、たとえ、この世界の他にパラレルな世界があったとしても、究極的には世界は閉じているはずだよね。(メビウスの輪みたいに互いにつながっている可能性もある。けれどそれだって閉じていることに変わりはない)
しかし、なんでエントロピーは増大し続け、宇宙は熱的平衡(宇宙の死)に向かっているはずなのに、部分的に秩序化が起こるのだろう。


その秩序化がなぜ起こるのかという疑問は、人類にとって最大の疑問の一つであると共に、今、科学界で最もホットな話題の一つだ。
コンピューターの発達に伴って、複雑な物事を複雑なまま解析することが可能になってきている。
そこで今、複雑系なる学問が登場してきた。
複雑系の研究の結果で、今のところもっとも重要な発見が、
カオスの縁で適応が最大になる ということだ。
これはどういうことかと言うと、
系がカオス化する直前に秩序が現れるのである。そしてその秩序が最大の適応、多様性を産み出すということなのだ。


具体的な例をあげよう。
川があって、その流れの真ん中に岩があるとする。
この川の水量を序如に増やしていく、そうするとどうなるか。

まず、流れが緩い場合は、岩肌をなめるように水が流れてゆき、だんだんながれが強くなるにつれて、岩の下流に渦が出来てくる。この渦は、もっと流れが強くなるにつれて数を増やし、周辺に沢山の渦をつくり、それ以上流れが強くなると完全な乱流になる。つまり系がカオス化したのだ。
実は僕は昔、渓流釣りをやっていたので知っているのだけれど、一番さかなが釣れるのはこの多くの乱流が発生した所なのだ。

釣り人は経験的に、その渦に魚が一番多いことを知っている。
それはなぜなのかというと、その渦の中に、栄養がたまり、微生物が発生し、それを食べる水生昆虫が生息して、さらにそれを食べる魚が生息するという、生物の多様性を保つシステムが形作られるからである。
そう、現実にもカオスの縁で最大の適応がみられるのだ。
他にも、海が急に深くなる寸前の大陸棚とよばれる浅瀬で、生物種が多様になるとか、ビオトープや干潟など、現実にこの現象をみることが出来る。


もう一つの重要な発見が 創発(エマージェンス)ということで、これは部分がランダムな動きの中から勝手に秩序を創り出すことを発見したもので、ただの秩序ともいえる重大な発見だ。
どうやら、
世界は勝手に秩序を創り出すような法則があるみたいなのである。

恐らく世界は、部分からの創発と全体からの秩序という二つの方向性の均衡によって成り立っているらしい。
この分野はかつてデビットボーム(ホログラフィー理論)やグレゴリーベイトソン(サイバネティクス)イリヤプリゴジン(散逸構造)などが切り開いてきたのだけれど、科学の世界では結構マイナーだったみたいだ。
けれど、近い内にこの研究分野から世界の認識を決定的に変える発見があるはずなので、というか、自分的にはもう直感的に発見してるんだけど、証明出来ないので、そのうち誰かがやるだろう。
それではまた。

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