日本対トルコ戦 そして2006年に向けて

負けました、くやしいです。

日本はトルコに決定的なチャンスを与えることはほとんどなかったけれど、たった一度のチャンスを決められ、ほとんどの時間ゲームを支配しながら敗れた。

今日の先発メンバーは...

GK楢崎
DF宮本、松田、中田浩
MF中田英、小野、稲本、戸田、明神、三都主
FW西澤

調子が良い時こそ新しい血を入れねばならない。
試合の前にこう話していたトルシエは、活躍していたアントラーズコンビ、柳沢と鈴木に替えて虫垂炎のためにしばらく試合を離れていた西澤を初先発に起用し、ワントップの布陣にした。

そして三都主をトップ下に置き、小野を左サイドという初めて見る布陣。
うーん、どうなの?強そうな布陣ではあるんだけど...

ここでこの試合のポイント

トルコは攻撃が強く、あたりが強い。
しかし、後半戦に足が止まることが多い。
今日は雨が降り、ピッチは重く滑りやすい。
仙台スタジアムは気温がそれほど高くない。

日本は予選リーグの時のアドバンテージである湿気のある高温とコンディションが良くパスの廻しやすい芝というメリットを失っていた。

後半戦、相手が疲れてきたところで森島というカードが活きそうになかった。
こういうピッチでドリブルはあまり有効ではない。

それを踏まえて西澤のワントップと三都主の起用である。

結果的にいえば三都主は後半の切り札に残しておくべきだった。


この試合が始まって気付いたのは、日本の選手に疲れが見えるということだった。
あきらかに動きが鈍い。
それでも日本は多くの時間ボールを支配したしゴール前にも攻め込んだ。
だが、なんとなく全体的に覇気が感じられないし、ミスパスは多く、コンビネーションも今一だった。

一方のトルコ。
噂のウイング、ハッサンは相当怖いと思った。
一人で局面を打開出来る。

そうこうしているうちに、コーナーキックから1点を失ってしまう日本。

しかし、この時点でまだ焦りは無かった。
だんだんと左サイドに流れた三都主が相手ディフェンダーを振り切りシュートやクロスを打ったり、相手の背後を狙えるケースが増えてゆく。

しかし、この時点で相手ディフェンダーはまだそんなに疲れは無かった。
相手ディフェンダーに疲れが見えた後半にこの攻撃が出来たら...
ところが相手ディフェンスをパニック寸前においやった三都主は後半のピッチには居なかった。

1点を失ったものの良い流れの日本は前半終了間近、良い位置でのフリーキックを迎える。
キッカーは中田英、小野、そして三都主。
しかし、三都主の左足の放ったボールはゴールポストの隅に弾かれてしまった。

前半終了0-1

後半をどうするか?だ。

自分の目には西澤があまり良くないと感じた。
トルコ相手には覇気が弱すぎる。

しばらく試合から遠ざかっているために流れに乗り切れていないように思った。
西澤に替えて鈴木を...
...というか、そもそも鈴木を先発にするべきだったのではないか?鈴木はテクニックがあるわけではないので、スペースが空いても決定的な仕事をする可能性は低い。
あえて後半に投入する意味が薄かった。

柳沢ならテクニックとスピードでなんとかしてくれそうなのだが...
彼はやはり調子を落としたのだろうか?

後半に投入された選手は稲本に替えて市川、三都主に替えて鈴木。

正直言って、トルコはほっとしただろうと思う。
三都主に相当崩されていたからだ。

後半の頭、日本は右サイドの市川を中心に攻勢にでた。
しかし決めることが出来ない。
そうこうしているうちに市川の右サイドが突破できなくなってきた。

頼みの左サイドは鈴木が流れているが崩しきれない。
鈴木は良い選手だが、テクニックがあるわけではないので突破するのが苦しいのだ。
結果として一旦後ろに下げ小野や中田浩二のアーリークロスという展開になる。

この日の日本代表は球際は激しかったが、ミスも多かった。

特に左サイドの中田浩二のパスは、チュニジア戦が嘘のようにミスパスやパスカットにあった。

疲れの見え始めたディフェンスにドリブルや1対1で勝負できる選手は日本には居なかった。

こうした膠着状態、疲れ、ビハインドの状況になって、ものをいうのは結局個人の力である。
ブラジル対ベルギー、苦戦したブラジルを救ったのはリバウドの個人技だった。
そこまで強い個人技を疲れた後半に発揮できる選手は残念ながらどこにも居なかった。

日本は市川に替えて森島を投入するも時すでに遅し、0対1で攻め続けながら敗れた。

こういう試合はよく起こることである。
トルコは強いチームだったが、相手が上だったということではない。

恐らく、日本は試合プランを誤った。
過去の日本代表の試合で前半にワントップで戦った場合、ほとんど点を決めていないが、2トップから後半にワントップにした場合、おどろく程に得点をあげている。
なぜか?

柳沢や鈴木のようなプレッシャーの激しく相手の裏をとるのが得意なフォワードの選手にかきまわされて疲れて足の止まったディフェンスに対して、森島や三都主のような選手が相手を崩すことを可能とするのだ。

疲れの出ていない前半戦では難しいが疲れが出て中盤が間延びした、ディフェンスが追いつくのがきつくなった後半ならば...
チャンスは拡がったはずだ。

考えすぎ、おそらくこの言葉がもっとも適切な言葉であるような気がしている。

引き分けもある予選リーグと後がない決勝トーナメントでは戦い方が異なる。
しかし、日本は図らずも確実に勝ってきた。
それはそのゲームプランが理にかなっていたからである。

相手を研究する時間が少ない決勝トーナメントでは、考えすぎる必要は無かった。

たとえ90分を引き分けてもゴールデンゴールはJリーグでは日常のもの。
後半勝負、それが日本を勝ちに結びつける方法だったような気が僕にはしている。

トルシエは本当に優れたコーチだったと思う。
しかし、本当に優れた監督では無かった。
これは最初から思っていたことであったが、最後まで変わることが無かった僕の見解である。

2006年の代表チームは2002年の代表よりもかなり強くなっているはずだ。
しかし2002年の代表チームが世界に衝撃を与えることが出来たかどうかは微妙なところだと思う。
やはりそれはベスト8(これは筆者のノルマでもあった)以上が必要だったのではないかと考えている。

しかし、選手達はやり残したことを多く抱えているに違いない。
負けるくやしさを味わったもののみが次の大会の歓喜を手にするのだと、この大会の勝者達は証明しているように思える。

2006年ドイツで、あの黄金のカップにキスをする選手達の姿を見ることができるように、このコーナーも応援を続けていきたいと思います。

2002.06.17 text gento.m.at

BACK